あなたは大丈夫!相続が争続にならないために。相続の基礎知識&実際にあり得るトラブル例を紹介します!
遺産相続と聞いてどんなイメージを持ちますか?家族構成の違いや兄弟の多いケース、実際に相続する対象が土地などの不動産や有価証券などなど。それぞれのご家庭によって流れは異なります。基本的な知識や節税対策、実際にあり得るトラブル例などをご紹介します。
親の相続問題が増加している!?
知ってました?親の相続、遺産分割調停が10年で35%増加しているんです
平成16年の遺産分割調停(新受)が9,868件なのに対し、平成26年は15,261件と、10年で約35%も増加しています。理由は核家族化にあると言われています。親が亡くなり、親族同士が顔を合わせる機会が減ります。これが、絶縁と引き換えにしてでもお金が欲しい理由になるそうです。
すでに関係が希薄な場合は、親族間での話し合いでは簡単に決着がつかず、遺産分割調停にもつれこんでしまう現実があります。全体の約6割は調停成立として終局していますが、残り約4割は、新たに紛糾解決手段として何らかのアクションが起こっています。
親の相続問題は一般家庭ほどもめている!?
争いの原因はほとんど「お金」です。遺産がすべてお金だったり、多額の資産があるごく一部の人たちのように、分配できる資産がある場合は上手に分割できるので、あまり争いにはなりません。
しかし、資産に「不動産」が含まれていて、その割合が高いと分割がむずかしくなります。遺産分割調停の割合は、総額が5,000万円以下の一般的な家庭が一番多いデータがあります。
課税対象が一般の会社員世帯に広がる
平成26年1月1日から税金のルールが変わりました。一部の資産家の人たちだけの世界と思われていた課税対象が、一般家庭にまで広がっています。
課税対象の最低ラインが引き下げられ、多くの人が相続税に対して無関心ではいられない状況です。最新の試算によりば、ルール改正前は全体の4%→改正後は8%と増加し、5万人以上増えています。地価の高いターミナル駅周辺に土地・マイホームを所有していたりすると課税対象になる可能性が高くなります。
相続が5,000万円なら1,400万円が課税対象
最も多いのは自宅「土地・建物+預貯金(1,000万円〜)」というケース。以前は5,800万円以上の資産がないと課税されませんでしたが、現在は3,600万円以上で課税されます。
例えば、評価総額3,000万円の土地・建物と、2,000万円の預貯金がある場合は総額は5,000万円になります。5,000万円のうち1,400万円に対して課税がされます。
親の生前から節税対策が大切です☆
親の生前から対策をすることで、大幅に節税したりゼロにすることができますよ。
①小規模宅地の特例
小規模宅地の特例とは、相続人が居住している財産(不動産など)などに、通常の相続税が発生してしまうと、生活できない恐れがあることから設けられた特例措置です。
②教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置
もともと親から子どもへ、祖父母から孫へ生活費など、必要な金額を都度渡すのであれば贈与税は課されません。しかし、それ以外の資金については、贈与税の基礎控除(非課税枠)で1人につき110万円の贈与を受ける「暦年贈与(れきねんぞうよ)」があります。
上記とは別に、結婚・子育て・教育などについての贈与は、期間限定ですが贈与税が非課税になる仕組みが採用されています。教育資金として一括で贈与する場合、子ども・または孫1人に対して1,500万円が上限となります。
※平成31年3月29日まで。
教育資金一括贈与:文科省
③結婚・子育て資金の一括贈与制度
結婚・子育て資金を祖父母や両親から、贈与した場合、1人(20〜50歳)につき1,000万円、結婚関係については300万円まで贈与税が非課税になります。
結婚式やマイホーム購入など、人生にはまとまったお金が必要となるイベントが盛りだくさん。お金の支援があったら本当に助かりますね。
※平成31年3月31日まで。
結婚・子育て資金:内閣府
④生命保険を活用
生命保険の掛け金は損金扱い(費用の一部)になり、保険契約者を被相続人・保険金の受取人を相続人として契約することで、保険金はほとんど非課税対象となります。
保険料等:国税庁
親からの相続権について
法定相続人とその順位について復習しよう
パターン別にご紹介します。
パターン1.配偶者と子の場合
・配偶者:1/2
・子:1/2 ※子どもが3人の場合は1/2÷3=1/6
パターン2.配偶者と直系尊属(父・母)
・配偶者:2/3
・直系尊属(被相続人の両親):1/3 ※両親ともに生きていれば1/3÷2=1/6ずつ
パターン3.配偶者と兄弟姉妹
・配偶者:3/4
・兄弟姉妹:1/4 ※兄弟が2人の場合は1/4÷2=1/8ずつ
税率も交えて親の相続パターン例をご紹介♪
父に遺産が1億円ある場合
単純計算すると以下の分配となります。
妻(配偶者):1億円×1/2=5,000万円
長男:1億円×1/4=2,500万円
長男:1億円×1/4=2,500万円
〜課税価格別に税率&控除額の速算表〜
・1,000万円以下→税率10%=控除額:なし
・3,000万円以下→税率15%=控除額:50万円
・5,000万円以下→税率20%=控除額:200万円
・1億円以下→税率30%=控除額:700万円
・2億円以下→税率40%=控除額:1,700万円
・3億円以下→税率45%=控除額:2,700万円
・6億円以下→税率50%=控除額:4,200万円
・6億円以上→税率55%=控除額:7,200万円
配偶者には税額控除があるので総額は650万円
課税総額は1,450万円となりますが、配偶者には配偶者は税額控除があります。よって、総額は0(妻)+325万円(長男)+325万円(長女)で650万円となります。
・妻:5,000万円×20%(税率)−200万円(控除額)=800万円→0円
・長男:2,500万円×15%(税率)−50万円(控除額)=325万円
・長女:2,500万円×15%(税率)−50万円(控除額)=325万円
注)税額軽減の期限は10カ月以内で、控除対象は1億6,000万円まで。
二次相続まで考えて節税対策をする
節税対策のため、妻(配偶者)のみが全額相続した場合、妻が亡くなったときの二次相続で損してしまうパターンがあります。夫婦二人の相続税をトータルで考えることが大切です。
【パターン例】
父の1億円の資産を母、子どもの2人で分割する場合
単純計算すると……
・一次:妻100%、長男0%→課税は0円
・二次:長男100%→課税は700万円
一次で1/2づつ分けておけば、200万円(妻)+200万円(長男)で計400万円となり、300万円を節税することができるのです。
財産把握チェックリスト
財産を争い家族がもめるのは悲しいこと。日頃からコミュニケーションを増やし、全員でどういった資産があるか把握しておきましょう。
・自宅
・土地、ビルなどの不動産
・預貯金
・有価証券
・金資産
・生命保険
・家財道具
・宝飾品や美術品
・自動車
・ローン(▲)
・借金(▲)
・未払い賃料(▲)
▲…マイナス財産
親の相続手続きの流れとは?
相続人全員が合意できたら
全員が無事合意できたら「分割協議書」という書類を人数分作成します。それぞれ全員分の書類に署名&捺印をして、各自1通づつを保管します。
「分割協議書」は必須ではありませんが、不動産などの所有権を移転する場合には添付書類として提出が必要となります。また、後々のトラブル防止にも役立つでしょう。
話がとまらない場合は遺産分割調停
話し合いをしても遺産分割できなかったり、話し合いさえできない状況にあるときは、家庭裁判所に遺産分割をすることができます。
家庭裁判所に申立てをしたとしても、家庭裁判所が間に入り、基本は相続人同士で協議を進めていきます。これを「遺産分割調停」と呼びます。ここで合意ができなければ、不服申し立てをしてさらに裁判で争う形になってしまいます。
知識を得たり相談するならどこ?
(1)まずは本やセミナーへ行き知識を蓄える
全体像をつかみましょう。セミナーも増えてきているので参加してみるのもいいですね。遺産額や税金についての知識、要件などを押さえます。
(2)信託銀行や民間コーディネーター
「遺言執行者」というかたちで遺産分割を行う信託銀行、節税アイディア豊富なコーディネーターに相談すると安心です。
(3)税理士
節税方法なども含め、遺産分割に強い税理士は意外に少ないのです。しかし、申告漏れなどで追加徴税を避けるためにも、申告手続きに関しては専門家に相談すると安心かもしれません。
(4)弁護士、家庭裁判所
どうしようもない場合のみ相談してみましょう。弁護士は調停役ではなく、相談する人にとって有利な条件を実現させるのが仕事です。家族観の関係修復が不可能になる可能性もあります。
親の相続、兄弟のトラブルパターン
親の財産が不動産の場合
現金と違い、均等に分けるのがむずかしいケースです。方法としては、
(1)自宅を売却した代金を預貯金と一緒に均等に分ける。
(2)自宅を共同名義にする。
などの方法が考えられますが、(2)の場合は売却や担保にしたいときに共有名義者全員の同意が必要となり、後々もめる原因にも。
子どもが2人(兄弟)いる場合、長男は親の家に住み次男は預貯金を相続し、あとから長男が均等になるように現金を支払うなどの方法があります。
親の介護負担を兄弟が認めない場合
被相続人に多く貢献した人物には、それに応じた金額を法定相続人に分配することが認められています。この話し合いはとなるので、争いに発展するケースが多々あります。
一番ベストなのは、親が元気なうちに役割を明確にし、寄与分について遺言書に残してもらうことです。掛かった費用などはしっかりと記録に残し、調停にもつれ込んだ場合に活用します。
親(どちらかが他界)が再婚した場合の相続割合
後妻は結婚期間の長短にかかわらず、法定割合である財産の1/2を受け取る権利があります。しかし、財産形成に貢献したのは前妻の場合は不満がでやすくなります。まずは親を含め全員で話し合い、遺言書を作りましょう。後妻と兄弟が合意の上で分割協議を行います。
例えば、不動産(実家)を兄弟に残し、預貯金は法定割合で分けたり、逆に法定割合で遺産分割して不動産は後妻が相続、死後は長男に戻してもらうよう後妻に遺言書を残してもらうのも一つの方法です。
資産はマイナスの場合もあります。親相続放棄する場合
遺産にはプラスの資産もマイナスの資産もあります。それを踏まえたうえで相続放棄を検討してみてはいかがでしょうか。
借金を相続放棄したい場合
遺産があると知った時点から3カ月以内であれば、家庭裁判所に相続放棄の申立てをすることができます。放棄が認められれば、借金を背負う必要はありません。法律で定められている兄弟姉妹で相続人不在の取り扱いとなります。
ただし、一度放棄してしまうと、不動産や預貯金など全ての財産に手をつけてはいけません。放棄する前に、本当に財産より借金が上回っているか調べましょう。
また、放棄する順番は、第一順位から第二順位、第三順位へと権利が移ります。事前に親族一同で借金について認識しておきましょう。
親が祖父母より先に亡くなっていたら孫はどうなる?
【パターン例】
・父→借金
・祖父→遺産放棄
・孫:1人
父が祖父より先に亡くなり、さらに祖父が亡くなった場合は、父の代わりに孫が相続人となることを代襲相続といいます。
仮に祖父が父の遺産を放棄をしたとしても、孫は祖父の相続人となることができます。もし、祖父の資産も放棄するとしたら、あらためて孫が放棄の手続きをする必要があります。
最後に
想像以上に遺産でもめてしまう現実は多いようです。子どもは将来を見据えて、家族の資産をある程度把握しておくことが大切です。また、相続する側として考えるのであれば、老後資金がどの程度必要なのか試算しておきましょう。もし資金に余裕があるのであれば、預貯金を子や孫に移し替える方法を考えて、早めに節税対策しておくといいでしょう。